【千葉 保険相談】外貨建て生命保険のしくみ
- 2022.06.17
- 生命保険

近年、米ドルやユーロなど外貨建ての生命保険が多く販売されています。生命保険会社はもちろん、証券会社や銀行の窓口でも扱っており、金融機関で提案されたことがある人もいるのではないでしょうか。
外貨建ての生命保険は文字通り、日本円ではなく外貨による生命保険です。ただ実は、日本円の生命保険と比べて異なる点はそれだけではありません。
そこで今回は、外貨建て生命保険のしくみを解説します。
外貨建ての生命保険のしくみ
一般的な生命保険は、日本円で保険料を支払い、万が一の際の死亡保険金や満期時の満期保険金なども日本円で受け取るものがおなじみですよね。これに対して、日本円以外の外国通貨で保険料の支払いや保険金の受け取りをする生命保険を、外貨建て生命保険といいます。日本では米ドル、ユーロ、豪ドルなどのものが販売されています(保険会社によって異なります)。
保険料と保険金の二つが外貨ベースのため、それらの支払いや受け取りのタイミングで為替レートの影響を受けるのが大きな特徴です。
たとえば米ドル建ての終身保険なら、万が一の死亡時に受け取る保険金額が米ドルで定められます。かりに10万ドルとすると、契約後にいつ亡くなっても受け取る死亡保険金額は米ドルベースで10万ドルです。ただ、これを日本円に換算すると為替レートによって金額が変わります。1ドル=100円なら1000万円になりますし、1ドル=90円なら900万円、1ドル=110円なら1100万円になるわけです。なお、保険会社によっては保険金を外貨のままで受け取れるところもあります。
契約中に支払う保険料も、たとえば「毎月130米ドル」のように外貨で定められるものが主流です。支払うときには自分で外貨を用意して保険会社に外貨で支払う場合と、保険会社から円換算した金額が提示されて日本円で支払う場合があります。円換算した金額を支払う場合は、外貨ベースでの保険料は常に「毎月130米ドル」でも、日本円にすると1ドル=100円なら13000円、1ドル=90円なら11700円、1ドル=110円なら14300円のように、支払時の為替レートにより毎回異なります。
外貨建て保険の種類
日本円のものであっても、生命保険にはさまざまな種類があります。万が一の死亡時に保険金がおりる死亡保険には、掛け捨てである定期保険と貯蓄性のある終身保険、また死亡時には死亡保険金が、満期時には満期保険金が受け取れる養老保険もあります。ほかに、老後資金を準備するための個人年金保険、病気やケガで入院したときに保険金や給付金を受け取れる医療保険などもあります。
日本で販売されている外貨建て保険は、実はこれらすべてについて、単純に通貨を外貨建てにしたものがあるわけではありません。基本的には終身保険や養老保険、個人年金保険など貯蓄性のあるタイプのものに限られ、個人向けには掛け捨てタイプの外貨建て保険は2018年6月現在販売されていません。つまり、万が一に備えるよりは資産形成のための商品として位置付けられることが多いです。
もちろん原則としては保険ですから、保障の機能も十分に備えています。たとえば米ドル建てで保険金額10万ドルの終身保険なら、いつ亡くなっても10万ドルの保険金を受け取れます。ただ、上述のように為替変動の影響を受けるため、日本円でいくら受け取れるかはあらかじめ確定していません。日本で生活している家族のために備えるなら、日本円での保険金額が決まっている方が安心感はあるかもしれません。

外貨建て保険のメリット
一方で、外貨建ての保険は日本円のものに比べて積立利率が高めです。3%程度の積立利率が最低保証される商品も多く、低金利が続く日本の金融商品に比べると魅力的に見えます。そこで、生きている間に受け取る保険、つまり資産形成のために活用されることが多いのです。
保険を生きている間に受け取るとは、貯蓄性のある保険を途中で解約して解約返戻金を受け取る、満期時に満期保険金を受け取る、個人年金保険の年金を受け取ることなどを指します。
では、どれくらいの資産形成効果が期待できるのでしょうか。たとえば30歳の男性が、ある保険会社の米ドル建て終身保険に契約する例(60歳払済、保険期間終身)をみてみましょう。保険金額10万ドルの場合、毎月の保険料約138ドルを60歳まで30年間支払うと、支払い総額は約5万ドルになります。この時点で解約すると、約5万2千ドルの解約返戻金が戻ってきます。もう少し解約を先延ばしして70歳にすると、戻ってくる金額は約6万5千ドルになります。払った金額よりも多い金額を、生きているうちに受け取れることがわかります。
外貨建て保険の注意点
ただし、繰り返しになりますが上記はあくまでも米ドルベースでの金額です。日本円に換算した受取額は為替レートによって変わります。米ドルベースではどんなに増えていても、契約したときよりも円高ドル安のタイミングで日本円に換算すると、支払った金額よりも受取額が下回ってしまうリスクもあることは十分に留意しましょう。
また、各種コストもかかります。
まず、両替の手数料です。外貨建ての保険料を日本円で支払い、保険会社で外貨に両替してもらう場合や、外貨の保険金・解約返戻金を日本円で受け取る場合には所定の為替手数料がかかります。「1米ドルあたり●円」のような形でかかるのが一般的です。手数料は保険会社によって異なりますが、米ドルの場合は1米ドルあたり0.5~1円程度かかるところが多いようです。1ドルあたりならそれほど大きなコストには見えないかもしれませんが、10万ドル、20万ドルといったまとまった金額を契約すると、思いのほか負担が重くなることもあるでしょう。
なお、為替レートは基本的に保険会社独自のものが適用されます。ニュースなどで目にするレートや、銀行で現金を両替するときのレートと全く同じとは限りません。タイミングによっては、こうしたレートと差が生じることもありえます。
また、保険会社に払い込む保険料の一部は「保険」としての契約維持にかかる費用に充てられます。払った金額のすべてが将来の受け取りのために積み立てられるわけではありません。その計算式は一般向けのパンフレットなどではすぐに見つからないことが多いですが、設計書や商品の詳細を記載した約款などを確認すると、記載されていることもあります。
さらに、契約してから短期間で解約すると「解約控除」という手数料を差し引かれる場合もあります。これは一律に料金が決まっているわけではなく、契約年齢や性別、保険料払込期間などの条件によって異なります。実際に解約しようとするタイミングで、保険会社に確認するのが良いでしょう。
このように、外貨建ての保険は日本円のものとはしくみが異なる点があります。内容を十分に理解したうえで検討すると安心です。